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抜擢 6
それから数日が経ち、蓮は再び凛に呼び出されTV局に連れて来られた。
「兄さん、今度は何のマネ?」
「見れば分かる」
不機嫌さを隠そうともしない蓮とは対照的に、凛は涼しい顔をしている。
その態度が余計に気に食わなくて思わずチッと小さく舌打ちてしまう。
前回同様促されるままスタジオに入るとそこでは大勢のスタッフが慌ただしく動き回っていた。
カメラマンに混じって、雑誌の記者がメモを取りながら忙しく走り回っている。
そのカメラの向こうには『獅子レンジャーキャスト発表』の垂れ幕が大きく掲げられており、既に会場入りしている役者陣が撮影用の衣装を着てスタンバイしていた。
1人は子役時代から第一線で活躍し、クールビューティの名を欲しいままにしている、今や人気絶頂の高校生俳優。――草薙結弦 。
青い服を着ているところを見ても、ブルーの役であることが想像できる。
女性の方は、名前まではよく知らないが何度かテレビ局内ですれ違ったことがある。
身長は160cm行くかいかないか位の小柄で童顔の女性だった。年の頃は結弦と同じくらいかもしくはそれより下。下手すると中学生に見えなくもない。
いかにも元気そうな印象で、思いの外ピンクの服がとてもよく似合っている。
胸が無いのが若干気になるが、それでも十分可愛い方だろう。
そして、今作品の主役であるレッド席に座っている男に視線を移し、蓮は目を見開いた。
「なん……で……」
そこにいたのは、数日前大阪行きのバスで出会ったあの青年だった。
「なんだ? 誰か知り合いでも見付けたか?」
兄に訊ねられ言葉に詰まる。 言えるわけがない。あんなに熱い夜を過ごした相手とこんな所で再会するとは思いもしなかった。
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