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懐かしい世界 5

雪之丞を筆頭に周囲が固唾を呑んで見守る中、蓮は東海と対峙すると、お互いの出方を伺うようにジリジリと間合いを詰めていく。 いくら台本があるとはいえ、この瞬間が一番緊張する。 いくら子供番組とは言えそれなりにリアリティを持たせる為に、アクションシーンのクオリティはそれなりに見えるようにしなければならない。 それにもし、ここで下手なアクションをしてしまえば、後で凛に怒られるのは目に見えている。 先手必勝。先に仕掛けたのは蓮だった。 相手の懐に飛び込むと、鋭い蹴り技を繰り出す。ギリギリのところでそれは避けられ、そのまま足を掴まれてしまい、蓮はバランスを崩して倒れ込んだ。 そのまま足払いをかけられ、床に仰向けに倒されてしまう。 すかさずマウントポジションを取られそうになるが、寸での所でそれをかわすと、起き上がり様に回し蹴りを食らわせ、素早く体勢を整えて構え直した。 「へぇ、なかなかやるじゃん。本当に当たったら痛そ。本当に2年もブランクあんの?」 「君こそ。キレがあるいい動きだね。でも、まだまだ荒削りだ。もう少し緩急をつけた方がいいんじゃないかな」 軽口を叩きながらも、互いに警戒は解かない。 その後も何度も攻防を繰り返して、息を切らせながらもなんとか食らいついて行った。 正直、東海がここまでやるとは思っていなかった。 蓮自身、多少なりともブランクはあると思っていたが、やはりそこは腐ってもプロと言うべきか。 殺陣にも基本的なパターンと言うものが存在し、体に染みついているのか自分で思ったよりもスムーズに動ける。 だが、体力はかなり落ちてしまっているようで、開始から5分経たずに息が上がってしまった。 対する彼は涼しい顔をして汗一つかいていない。 「なんだよ。もう息上がってんじゃん。体力なさすぎじゃない? 《《オジサン》》」 馬鹿にしたように鼻で笑われてカチンときた。

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