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懐かしい世界 6
「僕は元々頭脳派だからね。ただの体力馬鹿と一緒にされたくないな。撮影が始まる前までには戻すから問題ないよ」
「負け惜しみ? ま、いいけど。 撮影で足引っ張んないでよ?」
「ぁあ? 誰に言ってんだクソガキ……」
思わずボソリと口に出して、慌てて作った笑顔を貼り付かせた。 幸い本人には聞こえていなかったようで、こほんと咳払いを一つして気持ちを一旦落ち着かせる。
「……あんまり調子に乗ってると、後で痛い目見ることになるよ?」
「はいはい、そう言うのいいから。続きすんの? しないの?」
軽くあしらわれてムカつくが、ここで怒っては相手の思う壺だ。ここは我慢だと自分に言い聞かせてなんとか平静を保つ。
「もちろん、続けるよ。さっきのは軽いウォーミングアップ」
「ふぅん。じゃ、今からが本番? いいよ、相手してあげる」
再び睨み合うと、蓮は東海に向かって駆け出した。
そこからは、台本に書いてある通りの動きを忠実にこなして行く。
「ッ……!」
相手の攻撃を躱し、身体の反動を利用して蹴りを入れる。
「ぐっ……!……あっぶな」
「あれ? どうしたの? あぁ、ごめんね? 身長差考えて無かったよ」
当たるスレスレで避けた東海を見てにやりと笑うと、身長が低い事を気にしていたらしい東海がチッと舌打ちするのがわかった。
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