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秘密の関係
「期待してる」
ポンと肩に手を置くと、凛はあろうことか蓮の頭をわしゃわしゃと撫で回してきた。
「……あのさ、子ども扱いしないで欲しいんだけど」
「すまない。お前の頭は撫でやすくてつい」
「つい、じゃないだろ」
昔っから兄は何故か、自分の頭を撫でるのが好きなようで暇さえあれば頭を撫で繰り回して来る傾向にあった。別に嫌ではないが、お互いもういい年齢だし流石にそろそろ止めて欲しい。
言っても無駄だとはわかっているが、一応抗議だけはしておく。
「……ちょっとシャワー浴びて来る!」
汗臭いまま撫で回されるのはあまりいい気がしないので、ため息交じりに立ち上がると、蓮はその場を後にした。
それにしても、久しぶりに殺陣をやってみたが、中々面白かった。まだ、スーツを着て実際にアクションしたわけでは無いのでわからないが、少なくとも今日は自分が思っていた以上に身体を動かすことが出来てホッとする。もしかしたら、2年と言う月日が知らないうちに恐怖心を取り除いてくれていたのかもしれない。
今日これだけ動けたのだから、スーツを着てアクションしてもきっと1週間もあれば昔の勘を取り戻すことだって難しくない筈だ。
そんな確かな手ごたえを感じつつ長い廊下を歩いていると、いくつかの控室にプレートが掲げてあることに気が付いた。
何かドラマの撮影中だろうか? 誰もが一度は目にしたことのある大御所俳優たちの名前がずらりと並ぶ。その中の一つに「草薙 弓弦様」と言う文字を見付け、蓮は思わず立ち止まる。
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