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動揺と葛藤 4

それから数日、蓮は休まずにスタジオに足を運んでいた。 兄からはしばらく休んでもいいと言われていたが、どうにも気分が落ち着かず結局はこうして毎日通っている。 あれから何度か雪之丞相手に実際に外で実践的な殺陣をやってみたが、あの時のような体が重くなる症状は出なかった。 やはり、海岸での撮影が精神的にも負担になっていたのだろうと兄は言っていた。 負担のない範囲内での撮影なら問題なく出来るはずなので、今はとにかく基礎体力をつける事が最優先だ。 「お邪魔しまーす」 突如稽古場に木霊する呑気な声。 休憩中だった蓮と雪之丞は同時に入口の方を振り返った。 そこには、ナギと結弦が並んで立っており、蓮は咄嗟に雪之丞の後ろへと隠れるようにして身を縮こませた。 「ちょ、蓮君!?」 突然の行動に驚いた雪之丞が抗議の声を上げるが、蓮はフルフルと首を横に振る。 「悪いけど、このままにしておいて」 「えぇ~?」 「……」 蓮は雪之丞の後ろに隠れたまま二人の様子を窺った。 正直言ってナギに会うのは気が進まない。 シャワー室で散々悪戯した挙句に、約束をすっぽかしたのだ。最低な男だと罵られても仕方がないと思う。 まだ、心の準備が出来てないうちに会うのは避けたかった。 「デカいのが二人して、何やってんの?」 事情を知らない東海が後ろから呆れたような声を出す。

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