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動揺と葛藤 5
「いやぁ、それが……」
困り顔で言葉を濁らせる雪之丞を見て、東海は訝し気に眉を寄せる。
蓮の視線を辿って行けば、凛と何やら話し込んでいる俳優陣の姿が目に入った。
「何? なんかあったの? あ、もしかして……」
ニヤリと笑う東海はなんだか悪い顔をしている。
「ふぅん、オジサンって意外とロリコンなんだ」
「あ? いやいや、何言ってるんだ。それと、オジサンじゃないから」
誤解を招く言い方は止めて欲しい。心外だとばかりに思わず立ち上がると、東海がニヤニヤとした笑みを浮かべながら小突いて来ようとするので蓮はそれをヒラリと交わした。
「だってアレだろ? あそこにいるちんちくりんの事が気になってるんだろ?」
「ん? 何の話?」
彼が指さす先には、高身長のナギと弓弦に挟まれるようにして立っている小柄な少女の姿があった。
「え、あの子最初からいた?」
「いたじゃん。つか、違うのかよ」
「……全然記憶にない」
正直言ってナギと弓弦しか認識していなかった。よくよく見てみれば彼女は何処かで見覚えがある。
「うっわ、キャストの顔と名前くらい覚えときなよオジサン。あそこに居るのは草薙美月。今回唯一の女子キャストだよ」
「へぇ~……って、あの子女優さんだったのか! てっきり中学生かと!」
「ちょ、蓮君失礼だよ……」
雪之丞が慌てた様子で蓮の口を塞ごうとするが、時すでに遅し。
「だぁれが、中学生ですって?」
地獄耳なのか引きつった笑顔で、少女が近づいて来る。
「あ……! ぁあ! 何処かで見た事があると思ったら、弓弦君の楽屋から飛び出して来た小さい彼女!」
思い出したと言わんばかりの蓮の言葉に、美月の額に青筋が浮かんだ。
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