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動揺と葛藤 24
互いの連絡先を交換し、ナギと別れた後。蓮はすぐに凛の元へと連絡を入れた。
『どうした?』
「……今回の撮影の件なんだけど……。引き受けるよ。もしかしたらトラウマで撮影を続けられなくなる時が来るかもしれないけど……。それでも、やっぱりやってみたい」
『……』
電話越しに小さなため息が聞こえてきて、不安がよぎる。やっぱりそんな中途半端な覚悟じゃダメだっただろうか? それとも邪な気持ちを見透かされてしまった?
『俺も監督も最初からお前しか考えていなかったんだがな』
「え? そうだったの!? もし、断ってたらどうするつもりだったんだ」
『お前なら絶対にやるという確信があった』
「……」
なんだそれ。その根拠のない自信はどこから来るんだ。
あんな不甲斐ない姿を目の当たりにしたのにどうして――。
「俺のこと買い被り過ぎだよ」
『そんなことはない。現にこうしてちゃんと戻ってきたじゃないか』
「それは……そう、だけど」
『お前の性格は俺がよく知っている。だから、必ずお前ならやるというと思っていた』
「……」
なんだかずっと、兄の手の上で上手く転がされているような感じがして面白くない。
だが、兄に適う気が全然しなくて、蓮は降参だとばかりに溜息をついた。
『台本は以前渡しただろう? 撮影前までにしっかり読み込んでおいてくれ』
「あぁ。わかった」
台本なんてもう全部頭に入っている。昔の勘はやりながら取り戻すしかないだろう。
電話を切り、短く息を吐きながらスマホをポケットに突っ込む。
(とりあえず、今は仕事に集中しよう)
やると決めたからには中途半端なものは見せたくない。
今自分にできることを全力でやる。そう心に誓って家路についた。
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