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撮影開始 2

「随分と仲良くなったみたいだな」 二人の様子を見ていた凛が苦笑しながら声を掛けてきて、東海は不満げに眉を寄せる。 「別に仲良くないです。いくら凛さんの弟でも、オレはまだ認めてないから」 「そうか」 ふんっとそっぽを向いた東海の頭をマスク越しに軽く撫でた後、凛は蓮の方へと向き直るとそっと耳打ちしてくる。 「……だそうだ。後輩に舐められてるぞ。蓮」 「聞こえてたし。あまりプレッシャーかけないでもらえる? 兄さん」 「お前がプレッシャーを感じるようなやつだとは知らなかった」 「……チッ」 苦笑しつつそう答えると、凛は楽しげに喉を鳴らして笑う。 言外にお前の本当の実力を見せつけてやれと言われたような気がして、気合を入れ直すためにマスクをもう一度被り直した。 自分だって、舐められるのは嫌だし、趣味じゃない。でかい口を叩く東海を一発で黙らせる方法があるとするのなら唯一つ。 それは――圧倒的な力の差を見せ付けることだ。 現役を退いてしばらく経つ今の自分にそれができるかどうかなんてわからない。 だが、マスクを被ると不思議と心が落ち着いていく。それと同時に身体の奥底から湧き上がる闘争本能にも似た高揚感。それは、かつて自分も持っていた感覚だ。 自分のアクションを見て小さな子どもたちが目を輝かせ、自分もヒーローになりたいと憧れを抱く。その光景を見るのが好きだった。 「蓮くん、大丈夫?」 「――あぁ。大丈夫。行こうか」 心配そうな表情を浮かべている雪之丞の腹を軽く小突いた。すると彼は少しホッとした様子を見せた後、真剣な眼差しを向けてきた。 マスク越しに薄っすらと見える彼の瞳は、期待に満ち溢れている。 まるで早く見たくて仕方がないと言わんばかりの表情に、蓮は小さく笑った。 セットに上がり、スタッフの指示に従って立ち位置につく。そしてついに、凛の合図でカメラが回りだした。

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