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表裏一体
撮影終了後、シャワーを浴びて着替えを済ませた蓮は、そのまま帰宅する気にはなれず、なんとなくスタジオ内をブラついていた。
「……うーん……」
あれからずっと兄の言っていたことを考えては見るものの何が言いたかったのかさっぱり理解できない。そもそも、どうして突然あんな事を言われたのかも謎だった。
「うーん」
「何を唸ってるの? もしかして便秘?」
「……は?」
いきなり後ろから声を掛けられて、不機嫌さを隠そうとせずに振り返ると、そこには不思議そうにこちらを見ているナギと、撮影を終えたばかりだと思われる草薙姉弟が立っていた。
3人とも獅子レンジャーのジャケットを羽織ったままだ。恐らく着替えに戻る途中だったのだろう。
「小鳥遊さん、公共の面前で下品な会話は控えてください」
「えー? 便秘って聞いただけなのに下品って……」
心外だとばかりに唇を尖らせるナギの横で、弓弦が呆れたような視線を向けて小さくため息を吐いている。
「取敢えず、便秘ではないよ」
「じゃぁなんで唸ってたの?」
「それは……」
不思議そうに訊ねられ、蓮は言葉に詰まった。先ほどあった出来事を気軽に話せるような間柄ではまだないし、結弦と美月に関しては殆ど話もしたことがない状態だ。
言い淀んでいると、それを見兼ねた美月がすかさずフォローを入れてきた。
「きっとお腹空いてるのよ、ね?」
「えっ? あぁ、うん……実は何食べようか迷っちゃってて、肉がいいか魚にしようか……なんて」
全く見当違いではあるものの、渡りに船とばかりに話を合わせる。
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