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表裏一体 4
「蓮君、大丈夫? 昼間の事、まだ引き摺ってるの?」
ビールジョッキを片手にそう尋ねられ、蓮は昼間のアレを聞かれていたのかと曖昧な笑みを返した。
「……まぁ、ね。兄さんが口下手なのはわかってるつもりだったんだけど、駄目だし食らったのはコレが初めてだったから……」
「そっか。凛さんって、蓮君には甘いからね」
「えっ!? そうだった?」
全然気づかなかった。てっきり厳しく指導されていたものだと思っていたけれど。
「甘いよ。僕らなんて、二言目にはお前には才能がない。出来ないなら今すぐ降りろだよ?」
雪之丞の言葉に東海がウンウンと頷いているのが見える。
そんな事、自分は一度も言われた事無かった。
「……ッ」
今の時代、そんなパワハラ発言して訴えられないのだろうか!? いや、その前にそんな辛辣な事言われたらみんな本当に辞めてしまう。もしや、昨今のアクター不足は兄の所為でもあるのでは!?
衝撃的な事実に目の前がくらくらする。
「でも、凛さんの言ってる事は間違ってないと思うし、みんな平等に接してくれるから、オレは好きだけどな。怖いけど……なんだかんだでやっぱ凄い人だと思うし。アンタが特別扱いされてんのはムカつくけど」
そんな蓮の心情を察してか、東海が刺身に手を伸ばしながらフォローを入れるように言葉を付け足した。
自分に対してはツンとした態度ばかり取っている東海だが、凛の事になると妙に嬉しそうに話をする。それだけ、兄は尊敬されているという事だろう。
「そうだね。僕もそう思う。厳しいけど、ちゃんと僕達のこと考えて言ってくれてるのはわかるから。それに、凛さんは言葉こそ足りないけど本当は優しいんだよ」
ふわりと微笑みを浮かべて、雪之丞がそんな事を言う。兄が優しいのは自分にもわかる。
寧ろ、その優しさが自分にとってのデフォルトになっていたのだと今初めて気付かされた。
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