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疑問2

「ここが……そのスタジオですか」 案内された場所は、まるで秘密基地のような場所だった。オフィス内の一角に、ひっそりと作られたそこは、扉を開けると中は薄暗く、パソコンのディスプレイが青白く光っているだけだった。 部屋の中には沢山のモニターが置かれており、何処かの研究所のような場所が映し出されている。 「CGクリエーターは本来ならいくつもの工程をみんなで分担して作業することになっている。猿渡の奴が、人件費をケチったせいで今現在はその工程をほとんど全部一人でこなしていたような状態だ。一応、助手がもう一人いるには居るんだが……まだ見習い程度でメインで動くには荷が重すぎるんだ」 「……女にルーズな上にケチって、もうクズじゃん」 憤る東海の言葉に美月もウンウンと激しく同意する。 まだ青臭い二人には、大人の欲望渦巻くどろどろとした世界とは縁遠い存在だったのだろう。 対して、結弦は幼い頃から様々な裏側を見て来ているのか大して驚いた様子はない。 ナギに至っては、心底軽蔑していると言った様子だ。 「あぁ、全くだ。まぁ、アイツの愚行と罰は後で考えるとしよう。今はとにかく、棗が何処まで操作できるのかが知りたい」 凛はそう言うと、壁に設置されたスイッチを押して部屋の電気をつけた。 パッと室内が明るくなり、眩しさに目を細める。 「へぇ、凄い……中はこんな風になってるんだね」 「あちこち触るなよ。俺にもどれがどのスイッチなのかさっぱりわからん」 興味深そうに辺りをキョロキョロと見渡すナギに対し、凛は釘を刺すようにそう言った。 「ちぇ、ちょっと見ただけなのに」 「実際に触ってもいいですか?」 「あぁ、勿論だ」 不満げな様子のナギに苦笑しつつ、雪之丞が恐る恐る凛に尋ねると、彼は二つ返事で了承してくれた。

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