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疑問 9

「そんな……誰か連絡先を知ってたりとか……」 「心当たりを探ってみたが、番号を変えられていて繋がらなかった」 それってつまり、手詰まりという事では無いだろうか。 「それに、仮に居場所がわかったとして、俺は接触するべきか悩んでいる」 「え? それってどういう――」 凛の言葉に思わず聞き返そうとしたその時、テーブルの上に置いてあったスマホの着信を知らせるメロディが流れた。 画面を見ると、それは雪之丞からの電話だった。こんな時間に一体何事だろうか? 雪之丞は普段用がある時はメッセージアプリで済ませることが多い。 電話をしてくるなんて珍しい。なんだか胸騒ぎがする。 「兄さんごめん、ちょっと出てくるね」 凛にそう断りを入れ、そっとリビングを出て、スマホを耳に押し当てた。 「もしもし? 雪之丞、どうした?」 『蓮君、ゴメン。まだ起きてた?』 「流石にこんな時間には寝ないよ。それより、どうしたの?」 『引き受けたCGの件なんだけど、ちょっと困ったことがわかったんだ』 雪之丞の言葉に、蓮は思わず眉を寄せた。時計を確認すれば時刻はもうすぐ日付が変わろうとしている。 もしかして、あれからずっと彼女と一緒に残っているのだろうか? 「困った事って、何が……」 『あのね、ロボットを縮小させたり、大きくさせたり、動かすことは出来るんだ。色々な小技もファイルにデータが残ってたから何とかなりそうなんだけど。何度やってもグレートキャノンだけが出せなくって……。二階堂さんの話によれば、何か特殊なコマンドが使われてるらしくってそれを知ってるのは先輩さんだけなんだって』 グレートキャノンと言えば、毎話必ず最後に出て来る敵を倒す切り札の大砲の事だ。大砲が敵に命中し、倒した後、お決まりのセリフを放ち日常へと戻るのがセオリーになっている。 それが敵に打ち込めないとなると、迫力に欠けるし2,3話くらいは何とかなったとしても、最終話まで押し通すことは難しいだろう。合成で何処まで誤魔化せるかわからないが今はそれで凌ぐしかないだろう。 『取り敢えず、過去のグラフィックから引っ張って来て合成できないか試してみるつもり』 「……そうか。あまり根詰めすぎるなよ」 蓮はそれだけ言うと、通話を切った。 「何かトラブルか?」 「いや。配信楽しみだねって雪之丞から」 リビングに戻ると凛の隣に腰を下ろし、何事もなかったかのようにビールに口をつける。 兄に相談してみようかとも思ったが、笑えない冗談を言うほど疲れている兄にこれ以上負担を掛けるわけにはいかないと、黙っておくことにした。 顔に出にくい完璧なポーカーフェイスを演じるのは得意な方だ。 「そう言えば兄さん。さっき何を言いかけたの?」 「いや、何でもない」 「嘘。絶対何か知ってるでしょ?」 「……」 蓮が問い質しても凛は答えようとはしなかった。 どうあってもこの話題を終わらせたいらしい。 「兄さん!」 「……今日はもう戻る」 「え!? 兄さん! 待っ……」 蓮が止めるのも聞かず、凛は足早に家から出て行ってしまった。

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