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疑問 10
一体兄は何を知っているのだろう?
風呂上がりに濡れた髪をタオルで適当に乾かした後、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。
無機質な天井の模様を意味もなく眺めながら、蓮は先ほどの事を思い出していた。
話がしたいと上がりこんで来ておきながら、結局大事な話をはぐらかしたまま帰ってしまった。
一体何がしたかったのだろう? ただ、膝枕されに来ただけ? いや、まさか……。
兄の事だから、きっと何かしらの情報を持っているはずだ。そして、恐らくそれを自分に話す気でいた。でも、何が原因なのかわからないけれど、それを躊躇った。
何がいけなかった? あの会話で可笑しなところなんて無かったはずだ。
しいて言うなら兄の方がおかしかった。自分とヤりたいとかそんな事を言う兄では無かったはずだ。
疲れすぎていて、魔が差したというやつだろうか?
疲れている時ほどムラムラするとはよく聞く言葉だが……まさかね。
だからって実の弟にまでうっかり発言をしてしまうほど切羽詰まっていたのだろうか?
兄の性事情はよく知らないが、仕事柄そういった欲求不満に陥りやすいのかもしれない。
でもだからって……堂々巡りになりそうな思考をぶんぶんと首を振って掻き消す。
兄は一体なにを隠しているのだろう? 何をそんなに躊躇っているんだ。
考えないようにと思っていても、気になって仕方がない。
もしかして、自分一人で解決しようとしているのではないだろうか?
いや、まさか。……、でも、兄の性格ならあり得ない話では無い。
自分じゃ、役には立てないのだろうか? いや、きっと何かあるはずだ。自分に出来る事。
きっと何か……。
溜息と共にごろりと寝返りを打ち、目を閉じる。
明日は朝一で仕事が入っている。早く眠らなければ……。そう思ってはいるのだが、中々睡魔が訪れてはくれそうにない。
……そう言えば、ナギは今頃どうしているだろうか? 今日はなんだかんだと事件が多すぎてあまり話す時間が無かった。
それに、いつもならちょこちょこと後をついて来るのに、兄が居たせいか近づいてすら来なかった。
帰る時にも気付けば居なくなってしまっていたし、少し寂しい。
「……って、寂しいってなんだ。酔っているのか? 僕は」
自分に自分でツッコミを入れ、苦笑しながら寝返りを打つ。
別に、ナギが何をしようと勝手じゃないか。
どうせ明日になれば、気付けば側に居てあのクリッとした瞳で見ているに違いない。
様々な思いが脳裏を駆け巡り、その夜は中々寝付けないでいた。
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