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縮まる距離感 2
「ボクは、反対……顔出しするのは嫌だな……恥ずかしいし」
蓮が言い淀んでいると、雪之丞が控えめに手を上げて答えた。
「オレも反対。 顔出しすんのはアンタらの専売特許だろ? オレらアクターにそれを強要すんなよ」
「えー、はるみんもゆきりんも結構イケてると思うんだけどな。蓮さんはイケメンだし……」
「ハハッ、そう、かな? でも、うーんそうだな……。顔出しするかどうかは別として、裏側を撮影するのはアリだと思う。僕達アクターの事に少しでも興味持って貰えるなら、やっぱり嬉しいし」
皆の意見を聞きながら、蓮は自分なりの考えを口にする。
結局のところ、どんな形であれ自分達に興味を持ってもらえるのであれば、それはとても光栄なことだとは思う。
しかし、そうは言ってもやはり顔を出すのは気が引ける。東海の言うとうり、自分たちはナギら俳優陣とは違う。表立って顔を出すのはどうしても抵抗がある。
結局話は堂々巡りになり、皆一様にうーんと頭を抱えていると、不意にスタジオの扉が開き、凛が姿を現した。
「さっさと支度をしろ。撮影を始めるぞ」
硬い声が飛んできて、ピリッとした空気が辺りを包み込む。一瞬にしてその場が静まり返り、全員が姿勢を正した。
ほんの一瞬、凛と視線が合った気がしたが直ぐに逸らされ、思わずチッと小さく舌打ちが零れる。
「……ねぇ、面白いことを思いついた。兄さ……御堂監督の寝起きドッキリとか、企画ものはどう?」
蓮の提案に、その場に居た数人が小さく噴き出した。
「ちょっ、自分の兄、だろ? やっぱり容赦ないね。おに―さんは」
「あの御堂さんに、寝起きドッキリとか……どうなるのか想像付かない。でも、面白そう」
ナギや美月は乗り気なようで、面白そうだと笑い合っている。
その他の面々も笑いを堪えるのに必死な者、その後が地獄なんじゃないかと恐怖におののく者、反応は様々だったが、概ね否定的な意見は無いようだ。
「おい、何をしてる早くしろ!」
凛に睨まれ慌てて準備をする一同。それからは早かった。各々セットの準備を
終え、カメラの前に立つ。
ナギは今、何を思い何を考えながら演技をしているのだろう? 先ほどの事があったせいで、いつも以上に彼の事が気になってしまう。
自分の浅ましい独占欲の先にある感情に名前を付けるとするならば、それはもう――……。
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