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縮まる距離感 4

ナギの住まいは比較的新しい4階建てのマンションだった。23区内にあって交通の便が良く駅から徒歩10分。 本人曰く、駅近にしては比較的に安かったから、1DKの部屋を約半年前に買ったのだという。 駆け出しの新人にしては思い切った事をするな。と言えばナギは苦笑いを溢した。 「まぁ、結婚する気もないし……先行投資ってヤツ? 本当はタワマンに住みたかったけど、流石に、ね……」 そう言いながら、エレベーターで4階を選び南側にある角部屋に案内してくれた。 確かに一人で暮らす分には日当たりもいいし、間取り的にも悪くない。それに何より立地条件がいい。 オートロック付きでセキュリティもしっかりしていて、大通りに面してはいるが少し歩けば静かな住宅街が広がっている。 玄関から入って直ぐ、真っ白なフローリングが目に入った。白と黒を基調にしたインテリアで纏められており扉を外して暮らしているという奥の寝室から大きな窓が見えた。 約6畳ほどのダイニングに対し、寝室は12畳もあるのだという。全体的に低めの家具で統一された部屋はシンプルだがセンスがいい。 部屋の中は綺麗に片付けられており、生活感を感じさせない。とても居心地のいい空間は妙に落ち着く。 「適当に座っといて」 と言われて、とりあえずリビングのソファーの端の方へ腰掛けると、キッチンに立ったナギがマグカップを二つローテーブルの上に置いた。 ふわりと香ってきたコーヒーの香りが鼻腔をくすぐり、ホッと息を吐いたところで隣に座ってきたナギがコツンと肩に頭を凭れかけてきて、鼓動が僅かに早くなった。

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