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縮まる距離感 5

一瞬、今朝あった出来事を追及されるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。 テレビのリモコンを操作しながらするりと腕を絡めてきたナギは、そのまま甘えるように身体を寄せてくる。 「……な、ナギ? どうしたの急に」 「んー?  なんとなく、こうしたいなぁって思っただけ」 そう言いながらも、さらに距離を詰められ密着してくる。 コイツは誰にでも何となくでこんな態度を取るのだろうか? それとも、自分 にだけ? いや、そもそもナギにとって自分どんな存在なのだろうか。 「……ねぇ、お兄さん」 「な、なんだい?」 「俺の事、好きでしょ」 「えっ……」 突然の問いに言葉が詰まる。今朝の出来事を問い詰められるのは予想していたが、まさか単刀直入に聞いて来るとは思いもしなかった。 「どうだろう。まぁ、毛嫌いする子とは寝ないから……」 「答えになってないよ」 覗き込むように真っすぐ顔を見つめられ、鼓動が一層早くなる。 その視線から逃れる様に目を逸らすと、男にしては線が細めの綺麗な指先が伸びて来てするりと頬を撫でられた。半ば強引に顔を向けさせられ、視線が絡む。 「俺の目をちゃんと見て」 「……っ」 「……ねぇ、逃げずにちゃんと答えて。お兄さんは、本当は俺のことどう思ってるの?」 甘く囁く声は、どこか切なげに聞こえた気がする。そして何故か泣きそうにも見えて胸が締め付けられた。 「ぼ、僕は……」 自分の気持ちなんて、もうずっと前から薄々気が付いていた。でも、それをはっきりさせてしまったら、もっとその気持ちに執着してしまいそうで怖い。 だからあえて見ないふりをしていたのだけれど……。

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