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縮まる距離感 6
(ああ……もう、認めるしかないじゃないか)
でもそれをはっきりと口にするのは憚られて、口籠る。するとナギは困った様な表情を浮かべながら小さく溜息を漏らし、コツンと胸元に頭を預けて来た。
「……お兄さんって、イケメンのクセにヘタレだよね」
「な……っ」
「小学生でもわかるような、みっともないヤキモチ妬くし? 自分の事になると途端に臆病になるし? ホント、呆れるくらい」
グサリグサリと容赦なく刺さる棘に、思わず涙が出そうになる。自覚はしているが、改めて他人に言われるとかなり傷つく。
「そ、そこまで言わなくてもいいだろ」
「言いたくもなるよ。せっかく俺がこれだけお膳立てしてあげたのにさぁ……。でも、そういう所も俺は好きだよ」
ちゅん、と触れるだけのキスが唇に降ってきて、思わず固まってしまう。
今、自分は何をされた? 好きって言われた? 誰が? 誰を? 思考が追い付かず混乱していると、悪戯っ子のような笑みを浮かべたナギと目が合った。
「なに、ハトが豆鉄砲喰らったような顔してるのさ。そんなに意外だった?」
「い、いや……ごめん。少しビックリして……」
驚きのあまり上手く言葉を紡げない。
だって、そんな素振り今まで一度も見せたことなかったじゃないか。
「そうかなぁ? 俺、めちゃくちゃアピールしまくってると思うんだけど……。鈍すぎじゃない?」
「……さっきから棘が刺さりまくってるんだけど」
ジトリとした眼差しを向けると、ナギはクスクス笑いながらゴメンと謝ってくる。
「事実じゃん。お兄さんってさ……自分の気持ちに気付くの遅すぎて、好きな人にフラれてそうだよね」
「う……っ」
何気ない一言が胸に突き刺さる。
実際問題、自分の気持ちと向き合うのが遅すぎて、本気で手に入れたいと思った男に逃げられたのはここ数カ月以内の事だ。
そんな過去の恋愛事情を的確に突かれ、ぐうの音も出ない。
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