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トラブル続きのスタート 3

「……まぁ、でも。ワイプで映ってたみっきーと、はるみんの顔、超面白かった。真っ赤になって手で目ぇ隠してるのに隙間からバッチリ見てんの。弓弦は顔赤くしてそっぽ向いてたなぁ。レアな顔撮れたし、インパクトは充分だったのかも」 「へ、へぇ……」 そりゃそうだ。突然背後からパン一の男が出てきたら、誰だって動揺する。と言うか、誰とも知らない視聴者にあられもない姿を見せてしまった事が何よりも気まずい。今更だけど……。 「そう言えば、なんて言って誤魔化したんだ?」 「え? それは秘密」 「……気になるんだけど。と言うか恋人同士は隠し事したらダメなんだろう?」 悪戯っぽく笑う彼に、蓮は眉間にシワを寄せた。 「あは、ちゃんと覚えてたんだ? 気になるならアーカイブ見てみたら? しばらく残しておくって話だし」 どうにも嫌な予感しかしない。と言うか、初っ端から放送事故過ぎないか!? 大丈夫なのか、このチャンネルは。 「まぁまぁ、細かい事は気にしないで、朝ごはんでも食べよ。撮影は昼からだし、それまで一緒にいようよ」 ナギはそう言うと立ち上がり、キッチンへと向かう。 「僕も何か手伝うよ」 ジッとしているのはなんだか落ち着かなくて、キッチンに立つナギの後を追う。 「別に、座ってても良かったのに」 「そう言うわけにはいかないだろ。散々迷惑かけちゃったし」 「ほんと手がかかるよね。お風呂でのぼせちゃうし、配信には半裸で乱入してくるし……」 ナギはクスッと笑うと、冷蔵庫から卵を取り出し、手際よくフライパンに割り入れた。 「……まぁ、でも……そういう大人げない所も嫌いじゃないよ」 そう呟いて、コンロの火を点ける。 その横顔が少しだけ赤いように見えたのは、きっと気のせいなんかじゃなかったはずだ。

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