135 / 351
トラブル続きのスタート 4
こういう時、どう反応をするのが正解なんだろう?
なにかリアクションをと思うものの、気の利いた言葉一つ思いつかなくて、ソワソワと落ち着きなく視線を彷徨わせていると、ナギが蓮の方を見て小さく笑った。
「お兄さん、棚から白いお皿出してくれない? あと、マグカップも二個」
「わかった」
言われるがままに食器戸棚を開け、皿を取り出して空いているスペースに置くと、ナギが手際よくそこに盛り付けていく。
トーストにベーコンエッグ、レタスとトマトのサラダに、コーンスープ。あっという間に完成した朝食はとても見栄えが良くて、食欲を唆られた。
何故だろう。何処にでもありそうだし、勿論食べた事はある。なのにどうしてか、とても美味しそうな物に見えて仕方がない。
「ほら、出来たよ。運ぶの手伝って」
「うん」
ナギと一緒にローテーブルまで運んで、向かい合って座る。
自分だけソファに座るのは気が引けたが、ナギが先に床に座ってしまったので、仕方なくソファに腰を下ろした。
「いただきます」
軽く手を合わせてから、箸を手に取る。こうやって誰かと朝食を食べるのは何年ぶりだろう? 何時もコンビニで簡単に済ませることが多かったからだろうか。新鮮で、温かく感じた。
「……どうかな?」
じっとこちらを見つめる瞳に、蓮は口の中の物を飲み込んでから答える。
「凄くおいしいよ」
「……そっか」
朝の光の中、ナギは口元を微かに緩めて笑った。
その笑顔が眩しくて、蓮は目を細める。
「その顔、凄く好きだな」
「……えっ?」
ポロリと自然に口から滑り落ちた言葉に、ナギは一瞬驚いたように目を丸くして蓮を見た。そして、みるみると頬が紅潮していく。
じわじわと首から赤くなっていく様子を間近で見て、なんだか自分まで照れくさい気持ちになってしまう。
ともだちにシェアしよう!