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トラブル続きのスタート 8
「……蓮。お前、あいつとどういう関係なんだ?」
「え?」
人気の少ない廊下に移動し、単刀直入に凛の口から放たれた言葉は、予想だにしていないものだった。蓮は思わず足を止めて、目を丸くして兄を見上げる。
「え? じゃない。お前がそこまで酒に強くないことくらいは知っている。だが、自分の限界を知らない年齢でも無いだろう」
「……」
返す言葉が無かった。酔いつぶれていたというのは嘘だと見抜いて、こんな質問を投げかけてきたのだろうか?それとも、ただ単に疑問に思っただけなのか。
この場合、兄になんと説明したらいいのだろう? 少なくとも今、付き合い合い始めたなんて言える雰囲気ではないこと位は蓮にもわかる。
思わず黙り込んだ蓮を見て、凛は眉間のシワを一層深くする。
どうしよう。何か言わなければ。
頭の中ではそう思っていても、上手く言葉が出てこない。口を開いては閉じてを繰り返していると、痺れを切らしたのか、兄は大きな溜息をついた。
「まぁいい。お前のプライベートに干渉するつもりは無いし、仕事に支障が出ない限りは何をしようと勝手だ」
「……」
「だが、一つだけ言っておく。あまりのめり込み過ぎるなよ。あいつは危険過ぎる」
「え……?」
一体何の話をしているのだろう? ナギが危険? それはいったい……?
聞き返そうとしたが、兄はそれ以上は何も答えてくれなかった。
蓮は兄が去って行った後もその場に立ち尽くしたまま、困惑気味に頭を掻く。
兄はいつもそうだ。言いたい事だけ言って肝心な事を何一つ教えてくれない。
前回の謎発言だって結局何が言いたかったのか、何を知っているのかわからないままだし、今度はナギが危険だって?
「ムカつく……」
兄に彼の何がわかるというんだ。考えれば考えるほど段々と腹が立ってきて、思わずチッと舌打ちをすると蓮は乱暴に壁を蹴った。
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