139 / 351
トラブル続きのスタート 9
「雪之丞はあの動画を見て何を妄想してたのかな? 気になるなぁ……」
「そ、そんなの言えないよぉ……」
泣きそうな声で呟いて縮こまってしまった彼に近づき顔を覗き込む。目が合うなりサッと逸らすものだから益々面白くなってしまって、つい調子に乗ってしまいそうだ。
「言えないような事? 何を考えてるか当ててやろうか? そんな事には興味ありませんって顔してんのに、いやらしいなぁ雪之丞は」
「……ッ」
耳元で囁けば、ビクッと肩が跳ね上がる。
そのまま耳に息を吹きかけてみれば、面白い位に身体が震えて、ぎゅっと服の裾を掴まれた。
「あ、あのっ、蓮くんっ……ちょっと、近いよ……」
「んー? そうか?」
「そうかって……あの、本当に……っ」
「……何二人してじゃれ合ってるの?」
「……っ!?」
突然背後から声を掛けられてハッとする。振り返ると、そこには呆れた表情のナギがいた。
「あ、ナギ君……おはよう」
「おはよ雪之丞。もうすぐ撮影始まるよ。早く支度しなよ」
「あっ、うん! すぐ行く」
何時になく硬い声でそう言って、自分には冷たい視線が突き刺さる。
「???」
何か気に障るような事をしたのだろうか? 不思議に思って首を傾げているとナギが蓮の服の袖をグッと引っ張って、耳打ちしてきた。
「心配してたのに……油断すると直ぐ浮気して……」
「は? 浮気?」
「あんな可愛い子に迫られたら、誰だってコロッといっちゃうよね」
ナギは何故か不機嫌なようで、唇を尖らせてぶつくさと文句を言っている。どうしてそんなに怒っているのだろう?
蓮には全く理解できなかった。
「え、いや……ちょ、待ってくれよ。僕がいつそんなこと……」
「今してたじゃん」
「してないって……」
「自覚なしなの? タチ悪いなぁ」
どうやら、無意識のうちに彼を怒らせてしまっていたようだ。
一体何が原因なのかはわからないが、とりあえず謝っておいた方がいいのだろうか。
ともだちにシェアしよう!