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気付いてよ 2
雪之丞を連れてやって来たのは、路地裏にある小さなBARだった。
『BLACK CAT』と店名が書かれたイーゼルには、黒猫のイラストが描かれている。
半年ほど前、当時出演していた現場監督の紹介で連れて来られた店がここだった。
マスターの強烈な個性と、何よりその美味しいカクテルにすっかり魅了されてしまい、今では行きつけの店の1つになっている。
「……ここ?」
「そ。この店のマスターが、超個性的で面白いんだよ」
「へ、へぇ……」
「入ってみればわかるよ」
悪戯っぽく笑いながら、ナギがドアを開くとカランコロンと涼し気なベルが鳴り響きゆったりとしたBGMと暖かな空気が二人を包み込んだ。
12月間近の外気に晒されて冷え切っていた身体が、じんわりと温かくなっていく。
「あー、暖かい。 やっほ、ナオミさん。久しぶり~!」
「いらっしゃーい。って、アラ!? ナギ君じゃないの久しぶり~!!」
野太いキンキン声が響き渡り、店内にいた数人の客達が一斉にこちらを振り向いた。カウンターにいた男は身長は170を超えているだろうか? どう見ても男性と思われる大柄なドレス姿の女性が器用に野太い声をあげた。
「相変わらず元気そうだね、ナオミさん」
「あったりまえよぉ! あたしはいつでもパワフルよ! で、そちらは? もしかして……新しい彼?」
「違うよ。俺の仕事仲間!」
ナギが否定すると、ナオミと呼ばれた女性はおいでおいでと、手招きをする。
「そうなの? アタシはナオミ。この店のオーナーよ」
「ボ、ボクは……棗、雪之丞です。こう言うお店初めてで……よくわかって無くって……」
「ちょっと! いい身体してるじゃない!? 程よく引き締まった筋肉、ムッチムチの二の腕……。たまんないわぁ~!」
「ひっ……!」
いきなりナオミに抱き着かれそうになり、雪之丞は怯えた表情を見せた。その様子にナギは苦笑しながら彼女を宥めると丁度空いていたカウンター席へと腰を降ろした。
「だめだよナオミさん。ゆきりん怖がらせちゃ」
「あら、ごめんなさい。アタシったらつい……」
ナギに諭され、ナオミは悪戯っぽくペロリと舌を出した。
「そう言えば、動画見たわよ。まさか、蓮君が一緒だとは思わなかったけど……」
「えっ!? ナオミさん、お兄さんの事知ってるの? 話した事あったっけ?」
ナギは驚いて目を見開いた。話しぶりからしてどうやら、彼女は蓮の事を知っているらしい。
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