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気付いてよ 7
「余計な事言わなくていいから」
怒ったような口調で言いながら。ふいっと視線を逸らす。
これはもしかしなくても、自分たちの事が気になって店の前まで来たけど、入るきっかけが無くってウロウロしてただけなのでは?
何それ……可愛い、かも。
口に出したら怒られるだろうが、蓮の事をそんな風に思ってしまった自分にびっくりだ。
「もー、一緒に来たかったんなら早く言えばよかったのに。寒かったでしょう?」
「……邪魔しちゃ悪いかと思ったんだ」
「あらあら、随分可愛らしいこと言っちゃって。とりあず座ったら?」
クスクスと笑うナオミに、蓮はバツが悪そうに顔を背ける。その仕草がなんだかとても愛しく思えて、口元に自然と笑みが浮かんだ。
「お兄さん、こっち来て」
「え? でも……」
「いいから、ほら、此処に座ってよ」
戸惑いを見せる蓮の腕を掴むと、半ば無理やり雪之丞と自分の間に座らせる。
ふわりと香る蓮のフレグランスの匂いが鼻腔をくすぐり、なんだか嬉しくなって笑いながら彼の腕にギュッと抱きついた。
「ちょ、ちょっと……」
「いーじゃん、別に」
慌てふためく蓮に悪戯っぽく微笑むと、ナギは満足そうに身体を寄せる。ずっと外に居たせいか服も肌も冷たくて、ひやりとして気持ちがいい。
「あらっ? ラブラブね」
「……ほんっとラブラブ。……羨ましいなぁ」
べったりとくっつくナギを見て、雪之丞がボソリと呟く。その表情はナギとは対照的で少し悲しそうで……。
「ねぇ、ゆきりん。……彼の事、好きなんでしょ?」
三人の様子を見比べて、ナオミが確信したように小声で彼に尋ねると、雪之丞は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに観念したかのようにゆっくりと首を縦に振った。
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