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きづいてよ 9

「……セフレなんかじゃないよ」 蓮はそれだけ言うと、掴んでいたナギの手を解放した。 「あら、駄目よ東雲君。彼、これから超有名になる予定のスーパーヒーローなんだから。蓮君も仕事柄、そういう事はナイショなの。プライベートは聞かないであげて」 「えっ? そうなんですか!? 」 目の前にそれぞれのグラスをことりと置きながらナオミが東雲と呼ばれた男に告げると、東雲は目を丸くして蓮達を見やった。 「あ、何処かで見たことあると思ったら、キミ、小鳥遊君? そっか! 芸能人だったのか……不躾な事聞いて悪かったね」 ナギの顔をまじまじと見ながら東雲が納得したようにポンっと掌を叩く。 「え、あー……いや。まだまだ駆け出しなので。これからもっともっと活躍して一発でわかるように頑張ります!」 そう答えると、ナギは営業スマイルを東雲に向け、グラスに注がれた水をクイッと一気に飲み干した。 欲を言えば、蓮にハッキリ言って欲しかった。でもまぁ、今は仕方ないか。 「俺、探偵をやってるんだ。もし、何か用があるなら此処に連絡して。浮気調査から人、物探し、暗号の解読、どんな依頼でも引き受けるよ」 東雲は名刺入れから一枚の名刺を取り出すと、ナギに差し出した。 「へぇ、探偵さんかぁ」 「ねぇ、暗号の解読が出来るって本当? それに、人探しも」 雪之丞がゆっくりと起き上がり、東雲を見る。 「そうか! 東雲君が居たね。すっかり忘れてたよ」 「って! 御堂さーん! 酷いなぁ。色々と手伝ってあげたじゃないですか」 蓮がハッとしたように声を上げると、東雲は情けない声を上げながら蓮の肩を掴んだ。 「ごめんごめん。今、ちょっと色々とごたごたしてて。手詰まり状態だったんだ。いくつか頼みたいことがあるんだけど引き受けてくれないか?」 「なんですか? 芸能界の闇でも暴くんです?」 「ハハッ、あー、まぁ。色々あるんだよ。今日は奢るからさ、お願いできない?」 蓮の言葉に東雲は少し考え込んだ後、ニヤリと口角を上げた。 「うーん、そうですね。御堂さんの頼みなら人肌脱ぎますよ。丁度今は大きな案件も入ってないし」 「そっか良かった。ありがとう! これで、暗号の謎も解けるな! 雪之丞」 蓮が嬉しそうな表情で雪之丞に向き合うと、雪之丞はコクンと大きく首を縦に振った。 暗号って何の事だろう? CGさん失踪以外にも何かあったのだろうか。 嬉しそうにグラスを乾杯している二人を眺めながら、ナギはなんだか疎外感を感じて、蓮の袖口をクイっと引っ張った。 「ねぇ、暗号って何の話?」 「え? あー、えっと……それは帰ったら詳しく話すよ」 「いまじゃ、駄目なんだ……」 こんなの、ただの独占欲だ。わかっているけれど、やっぱり面白くない。言ってしまってからしまった。と思った。 面倒くさいヤツだと思われたりしただろうか?

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