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お願い 6

「弓弦君……どうしてここに?」 「それはこっちのセリフです。こんな寒空の中傘もささずに雨に打たれるなんて、何を考えてるんですか。風邪ひきますよ」 弓弦は呆れたようにため息をつくと、躊躇いもなく自分の傘を雪之丞に差し出して来る。 「え、いや……これじゃあ弓弦君が濡れちゃうよ」 「私は大丈夫です。そんなヤワな身体してませんよ。……それに……」 「それに?」 「……いえ、何でもありません。とにかく、行きましょう。送っていきますから」 雪之丞が首を傾げると、弓弦は苦笑いを浮かべて誤魔化す様に視線を逸らした。 「え、いや……でも、流石に悪いよ」 今をときめく有名人に傘を貸して貰った上に家まで送ってもらうなんて、そんな贅沢、彼のファンから怒られたらブーイングの嵐だろう。 それに、今日は出来れば一人にして欲しいというのが正直なところだった。 「遠慮しないで。マネージャーの車、すぐそこなので」 指さす先には路肩にハザードをたいて停車している黒塗りの車が見えた。 もしかして、一人でいる自分に気付いてわざわざ車を停めてまで声を掛けてくれたのだろうか?  だとすれば、これ以上断るのは逆に失礼かもしれない。 「ごめん、ありがとう」 雪之丞は申し訳なく思いながらも素直に好意に甘える事にした。 「別に謝る必要はありませんよ。それより、ほら、乗って下さい」 恭しく後部座席を開けて促され、観念した雪之丞は恐る恐る車に乗り込んだ。 車内は意外に広くて、シートはふかふかしているし、座席も広い。イケメンは車の中までなんだかいい香りがする。 しかも何故か、車の中に可愛らしいウサギや熊のぬいぐるみが積まれているのが意外だった。

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