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遊びじゃないよ 2
「……何が言いたい」
「別に。ただ、イイコちゃんぶって若い子を誑かそうとしてんのが気に食わないだけよ」
「はっ……随分言うようになったじゃないか。昔は俺の言いなりだったくせに」
鼻で笑って吐き捨てるように言うと、ナオミは呆れたように息を吐いた。
「そりゃそうよ。あの頃のアンタはどうしようもないクズ野郎で、こっちは被害者なんだから。そんな奴の言うこと聞いてたらろくなことにならないって学習したの。いつまでも成長してない誰かさんとは違うのよ」
「……言ってくれるな」
「事実を言ったまでよ。どうせ貴方にハッキリ言ってやる人間なんていないんでしょう? だから私が代わりに教えてあげてるの」
嫌味たっぷりにそう言いきった彼女の瞳は真っ直ぐで迷いがない。大きく変わったのは見た目だけでは無いのだと改めて実感させられる。
「お前、性格悪いって言われないか?」
「蓮君に言われたくないわよ。アタシはね、これ以上被害者を増やしたくないの。だから、適当に期待させて弄んで捨てる位なら、これ以上その子に近づかないで欲しいの」
真剣な声色で告げられた言葉に、思わずハッとして息を呑んだ。視線の先にはスヤスヤと心地よさそうな寝息を立てているナギの姿が映る。
「……弄ぶつもりなんて無いよ」
「嘘よ。だって、今までのあんたがしてきた行動見てれば分かるもの。貴方に本気で誰かを愛する気なんて無い。ナギ君の事も所詮遊びなんでしょう?……だったらもう止めて。これ以上アタシの知り合いが傷付くのは見たくないから」
「……っ」
咄嗟に返す言葉が見つからず、蓮は黙り込んだ。違うと言い切れない自分が歯がゆい。
確かに未だに本気になるという事がどういうことなのかわかっていない部分はある。だが、この胸の奥底にある感情が何なのか説明がつかなくて持て余しているのは確かだ。
ナギと知り合ってすぐの頃に同じことを言われたら、きっとこんな風には思わなかった。
けれど、今は少なくとも自分の隣で眠っている彼の事を、他の誰よりも大切にしたいと思っているのも事実なのだ。
「……僕は……」
「ん……っ」
蓮が口を開きかけたその時、不意にナギがモソモソと動き出し、眠そうに目を擦りながら身体を起こした。
まだ完全に覚醒していないのか、ぼんやりとした様子で辺りをキョロキョロと見渡している。
その様子があまりにも可愛らしくて、思わず蓮はふっと笑いを漏らしてしまった。
それに気付いたのか、ナギがこちらに視線を向ける。
パチクリと何度か瞬きを繰り返すと、ようやく意識がはっきりしてきたようで蓮の姿を認めてホッとしたように表情を緩めた。
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