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接触

11月も終わりに近づくと、街のあちこちでクリスマスソングが流れ始め、イルミネーションが煌びやかに輝き始める。街行く人々は皆どこか浮足立っていて、これから訪れるクリスマスシーズンへの期待に胸を膨らませているようだった。 そんな中、蓮は一人でショーケースを眺めては溜息を吐いていた。あの日から一週間。ナギとは大きな喧嘩をすることも無く、順調に関係を築けているように思う。 雪之丞とも会えばギクシャクするんじゃないかと思っていたが、そんな心配は杞憂だったようで、表面上はいつも通りに接してくれている。 時折、どこか寂しそうな表情でこちらを見ている時があるが、そういう時は大抵弓弦が隣にいてタイミングよく話しかけて来てくれる為、助かっている。 だが、ナギと二人でいる時に見せる視線は、やはり複雑なものが含まれている気がした。 蓮はもう一度深いため息を吐き出すと、ショーケースから目を逸らした。店内は多くのカップルがひしめき合っており、その雰囲気に当てられた蓮は居心地の悪さを感じていた。 何だかひどく場違いな気がして足早に店を出ようとしたその時――。 「あれ? 御堂さんじゃないですか」 聞き覚えのある声に呼び止められ振り返れば、そこには先日調査を依頼したばかりの東雲が立っていた。そのすぐ横には、がっしりとした体形の背の高い男が並んで立っている。 男は蓮の姿を目にすると、軽く頭を下げて来た。 この男には見覚えがある。確か以前、ストーカーを捕まえる時に依頼した警察官――。 「お久しぶりです。どうされたんです? こんな所で」 「あぁ、ちょっと買い物にね。二人は?」 「俺は付き添いです。大吾がどうしても付き合えって言うんで」 そう言って東雲はチラリと横に居る背の高い男を見上げた。男は困ったような笑顔を浮かべていたが、その目は優しげで、この二人が仲の良い友人同士だという事が伺える。 二人は恋仲か何かだろうか? 「へぇ、そうなのか」 「はい。それより、今日はお一人なんですね。もしかして、プレゼント探しか何か、ですか?」 東雲にそう尋ねられ、思わず言葉に詰まる。まさか図星だとは思わなかったのだろう。東雲は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに納得したという風に微笑んだ。 「やっぱり。もしかして、ナギ君に?」 「まあ……」 「やっぱりそうですよねぇ。で、どんな物がいいのか悩んでる、と」 「実はそうなんだ。でも……こう言うのって初めてで……。何をどう選べばいいかわからなくて。店員さんには女性ものばかりを勧められるし困っているんだよ」 相変わらず察しが良いなと思いながら蓮が素直に肯定すると、東雲は少し考えるようにして顎に手を当てた。 「――ちょっと、付き合いません? ちょうど御堂さんに連絡しようと思っていた所だったし」

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