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接触 7
「まったまたぁ~。そんな、中学生じゃあるまいし。謙遜も過ぎれば嫌味になっちゃいますよ」
そう言いながらも東雲は蓮の言葉を真に受けてはいないようで、クスリと微笑んだ。
「その中学生レベルがわからないから困ってるんだよ」
「……ガチ?」
「こんな恥ずかしい冗談言わないだろ」
蓮がムッとしたように口を尖らせぼそりと呟けば、東雲は一瞬ポカンとしてからプハッと噴き出した。
そんなに面白いことを言ったつもりはないのだが、ツボに入ったのか、肩をプルプルと震わせて表情筋が可笑しなことになっている。
「笑いたかったら笑いなよ」
促してやると、東雲は目に涙まで浮かべながら本当に笑い出した。中々笑い止まない所をみると、相当可笑しかったのだろう。
東雲は暫くの間肩を震わせ笑い続け、ようやく収まった頃には目に涙まで浮かべていた。
「……ちょっと、笑いすぎじゃないか?」
「す、すみませ……っ、ちょっと意外過ぎて。ププっ、だって、どう見たって経験豊富そうな顔してるのに……っ」
東雲は何度か深呼吸をして息を整えると、目に浮かんだ涙を指先で拭った。
失礼な奴だとは思うが、女にモテそうだとか、遊んでいるように見えると言われるのには慣れている。
実際、昔から男女関係なくモテてはいたし、身体の関係だけはそれなりにあった。
けれど、本気で人を好きになった事はなかったし、誰かの為に何かをしてやりたいと思った事は一度もない。
「わっかりました。俺がとびっきりのデートプラン教えてあげます」
東雲はそう言うと、得意気に胸を張った。
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