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接触 14
雪之丞の居た部屋を出て長い廊下を歩いていると、コンビニ袋をぶら下げた結弦が反対側から歩いて来るのが見えた。
「おはようございます。珍しいですね、蓮さんこんな早くに」
「あぁ。雪之丞にちょっと用事があってさ」
「棗さんに? ……そう、ですか」
そう言って、結弦は視線を彷徨わせて口籠る。
「どうかしたのかい? もしかして僕が来ちゃマズかったかな」
「いえ、そんな事は無いです……。ただ、珍しいなと思っただけですよ。では」
それだけ告げると、結弦は足早に雪之丞のいる部屋へと向かって行った。
「珍しいって。そんなに、かな」
まぁ、ここ最近は特に仕事のこと以外では接しないようにしていたし、グラフィックの事なんて自分にはわからないから近寄らないようにはしていたけれど。
逆に、彼はそんなに足しげくあそこに通っているのだろうか? そう言えば、いつもの取り巻き二人組が居なかった。
朝は別行動なのか? そんな事を考えながら、荷物を置きに向かっていると丁度、東海と美月が二人並んでこちらに歩いて来ているのが視界に入った。
「おはよう。二人共早いね」
「……アンタがいつも遅いだけじゃん? 今日は随分早いみたいだけど。台風か地震でも来るかな」
相変わらず口の減らない東海に、引きつり笑いで返し、美月の方をチラリとみる。
「そう言えばさっき、草薙君に会ったけど、一緒に行かなくて良かったのかい?」
「あぁ、ゆきりんの所でしょう? ゆきりん最近ずっと詰め込んでるみたいだから……」
「最近は毎朝、説教食らわせに行ってるよね。あんま効果ないみたいだけど」
「説教……」
結弦が雪之丞を叱っている図が中々想像出来ず、首を傾げると、二人は顔を見合わせて呆れた様に溜息を吐いた。
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