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交錯する思い 8

「この作品にお前を巻き込んだのは俺だからな。こんな事になるのがわかっていたら、推薦なんてしていなかった」 今にも泣きだしそうな表情で唇を噛む凛は僅かに震えているようにも見えて、蓮は思わず伸ばし掛けた手をグッと堪えた。 「もしかしたら、何もしかけて来ないかもしれない。だが、万が一お前に危害が加わるような事があったら? そう考えると怖くて仕方が無いんだ」 「兄さん……」 「病室で青白い顔をしたお前を見た時、生きた心地がしなかった。もう二度とあんな思いはしたく無い。危険になるかもしれないとわかっているのだから、お前を降板させるべきだ。頭ではわかってるのに……楽しそうに撮影に参加しているお前を見ていたらどうしても言い出せなくて……」 凛は俯いて、苦しげに言葉を吐き出していく。 その様子に、蓮は眉根を寄せた。 いつも自信たっぷりに見えた兄が、ここまで弱気になっている姿を見るのは初めてだった。 以前、突然家に突撃して来た時にも様子がおかしいとは思っていたが、まさかそんなことまで考えていたなんて思いもよらなかった。 「大丈夫だよ兄さん。たらればの話をしたってキリが無いだろう? 僕なら平気だし、今のメンバーが気に入ってるんだ。だから、降板なんて嫌だ」 凛の肩に手を置き、真っ直ぐに目を見つめて告げると、凛は辛そうに眉を寄せた。 何かを言いたげに口をパクパクと動かしていたが、結局言葉を発する事無く黙り込んでしまう。 「動画配信の宣伝も上手く行ってるって聞いてるし、撮影も今のところ順調じゃないか。CGの方も切り札を手に入れたから今よりもっとクオリティの高い映像が撮れるようになると思うし。雪之丞にはかなりの負担を強いているのはわかっているけど……。大丈夫、兄さんが心配するような事は何も起こらない。それに、何か起こっても今のアイツらとならきっとどんな困難でも乗り越えていけそうな気がしてる。だからさ、僕を降板させるなんて水を差すような事言うなよ」 蓮は凛の手を取り、両手で包み込むようにして握ると、ニッコリと微笑んで見せた。

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