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交錯する思い 9
「蓮……お前ってヤツは」
凛は何かに耐えるようにギュッと強く瞼を閉じた。
そして、ゆっくりと目を開くと、今度は蓮を真正面から見据える。
その瞳には、先ほどまでの不安の色は一切見当たらず、覚悟を決めた男の表情をしていた。
「わかった。お前がそう言うなら俺はもう何も言わん。ただ、何か怪しいと思ったらすぐに言えよ?」
「勿論。わかってるよ……。それにしても、兄さんはわかり辛いなぁ。何でも言ってくれたらいいのに」
「うるさい」
凛は少しムッとしたような表情を見せ、もう帰れと言わんばかりに蓮の背中を押した。
「何でそこで怒るんだよ」
「いいから早く行け! 小鳥遊を待たせてるんじゃないのか?」
「え? 約束はしてないし……流石に戻ったんじゃないかな」
そりゃ、此処に入る前に自分も行きたいとは言ってくれたけど、あれから随分時間も経ってしまったし、流石にもういないだろう。
「……言っておくが……。俺はお前とナギの関係に関しては別に反対はしない。だが、もう少し節度を持って接していれば何も言わん」
そう言いながらも渋い表情をしている所を見ると、手放しで応援してくれているというわけでは無さそうだ。それでも、反対されなかっただけマシだろう。
正直もっと酷い事を言われるのかと身構えていた部分もあったから少し拍子抜けしてしまった。
「はいはい。わかってるってば。気を付けるよ」
「本当にわかっているんだろうな?」
「信用ないなぁ。大丈夫だって」
凛の不安そうな視線に見送られながら、蓮は会議室を後にする。
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