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バスの中で 5
「……馬鹿」
恥かしくて押し黙ってしまったナギを見てくすっと笑うと、蓮は徐に立ち上がり運転手に声を掛けた。
「すみません、何処か休憩できるところがあれば寄って貰えませんか? 少し酔ってしまったみたいで」
「は、はい。わかりました。では、次のサービスエリアで休憩します」
「ありがとうございます。お願いします」
蓮が頭を下げると、バスは再び走り出す。
「何もわざわざ休憩所に寄らなくても……」
「僕が辛いんだよ」
「え……」
「ほら、触って?」
ナギの腕を掴んで引き寄せると、その手に自分の股間を押し付けて見せる。そこは既に硬く張り詰めていて、ナギはぎょっとして目を丸くした。
「キミの可愛い姿見てたら我慢できなくなっちゃった。だから、ね?」
「……っ、ね? じゃない! 勝手にシコってなよバカっ! 変態っ!!」
真っ赤になりながら強く股間を握り締められ、思わずウッと息を飲む。
まさか、反撃を食らうとは思っておらず、見上げると頬を赤らめながら目を吊り上げているナギの姿があった。
「たく、なんで!? みたいな顔してさ……。嫌なんだよ……。こんなAVみたいな事するのもされるのも」
ボソッと小声で言われ、思わず固まる。
初対面でいきなり跨って来たヤツが何を言うかと思ったが、火に油を注ぐような真似はしたくなくて蓮はぐっと言葉を飲み込んだ。
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