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束の間 3
「そうだな……。強いて言うなら……、一見クールで真面目そうに見えるが、実は自由奔放な性格で、少しS気のある……」
「えっ、ちょっ…随分と具体的だね。S気質の子が好きなんて、兄さんがMだったとは知らなかったな」
兄の意外な性癖を知ってしまった気がして、思わず頬が引き攣った。
「いや。俺はMじゃない。調子に乗ってるソイツを組み敷いて啼かせたらどんなに楽しいか……なんて想像してるだけだ」
そう言って、意味ありげに口角を上げる。その笑顔は実に楽しそうで……、一瞬寒気が走った。
「真面目な顔してそんな事考えてたんだ……」
「想像するだけなら、タダだろう? 実際に手は出せないからな」
つまり、妄想だけで満足していると。なんともマニアックな趣味だと、蓮は呆れ半分に息を吐いた。
自分も人のことを言えた義理じゃないが、気難しそうな顔をしながら脳内ではとんでもない事を考えている。
「なんか、一番ドスケベなのは兄さんな気がしてきた」
「性欲魔神のお前にだけは言われたくない」
お互い真顔で言い合い、思わず同時に吹き出した。
兄とこんなくだらない会話をしたのはいつぶりだろうか?
最近は色々とあり過ぎて、まともに兄と会話をしていなかったような気さえする。
兄と二人きりでこんなに穏やかな時間を過ごすのは本当に久し振りで、なんだかくすぐったいような気持ちになる。
ナギと同じ部屋になれなかったのは非常に残念だが、たまにはこう言うやりとりも悪くない。と蓮は無理矢理そう思い込むことにした。
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