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束の間 4
翌朝、まだ薄暗い時間帯に、蓮はゆっくりと目を覚ました。
隣を見ると、凛がスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
起こさないようにそっとベッドを抜け出し、部屋に備え付けてあるトイレの中でスマホから兄が熟睡している事を外で待機しているであろう2人に伝え自分はいつでもドアが開けれるように入り口付近でそっと息を潜めてその時を待つ。
数分が一時間位に感じるような緊張の中、今から行くとのメッセージを受け、蓮は意を決して静かに扉を開けた。
東海の手元には小型カメラが。ナギの手には小型のクラッカーがそれぞれ握られており、スヤスヤ眠る兄の目の前でそれを鳴らして驚かせようという算段だ。
ドッキリを仕掛けられた瞬間、兄は一体どんな反応をするのだろう? 驚いて大きな声を上げる?
それとも……? 期待と不安が入り混じる中、ナギたちを部屋の中に招き入れ、息を潜めたままベッドの方を指さし合図を送る。
「お邪魔します……。我らが鬼監督。御堂凛さん……。どうやらぐっすりと眠っているようです」
どこぞのリポーターのマネでもしているのか、案外ノリノリで息をひそめながら凛に近づいていくナギの姿が何だか可笑しくて、口元が緩んでしまいそうになるのを必死に堪える。
ナギたちが一歩、また一歩と凛に近づくにつれ、部屋の緊張感がどんどん高まっていくのがわかった。
息をするのも億劫になりそうなほどの重圧の中、ナギの指が上掛けに隠れている凛の布団を掴んだその瞬間――。
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