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勝負の行方 10
凛は意外とすぐに見付かった。
休憩スペースのソファーに座りパソコンをいじっていたのだが、蓮が声を掛けると、少し驚いた表情をしたのちに何か言いたげに二、三度口を開きかけたが、結局は何も言わずに小さく溜息をつくと隣に座るよう促してきた。
蓮は促されるがまま、彼の横に腰掛けると、蓮はあたりを見回し誰も居ないのを確認してから、兄の目の前に貰った名刺を差し出して早速本題を切り出した。
「……なるほど、アイツに会ったのか……」
「確証は無いんだけど、塩田って苗字、早々あるものじゃないし。それに、何処かで会った事がある気がするんだよ」
「……」
無言のまま画面から目を離さない凛の横顔を眺めながら、蓮は言葉を紡ぐ。
何か考えているようではあるけれど、何を考え込んでいるのだろうか? やはり、兄もこの男について何か知っているのだろうか? 蓮が黙って答えを待っていると、ようやく思考の海から浮上したらしい。凛は蓮の方に向き直った。
「偶然か、確信があって此処にいるのかがわからないのが痛いな……。情報が少なすぎる」
独りごちるように呟かれたその言葉に、蓮は思わず眉根を寄せた。
「だが、アイツが居るかもしれないとわかった以上、このまま何も手を打たないと言うわけにもいかんだろう」
「何か対策が?」
「いや。それはこれから考える」
凛のその一言に、蓮は落胆の気持ちを隠せずに大きく項垂れた。
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