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勝負の行方12

しかし、蓮はこうなったら絶対に引かない事も凛はよく理解している。 「――お前は昔からそうだったな……。一度決めた事は曲げないし、自分の意見を絶対通そうとする。ある意味我儘で、傲慢で、自己中心的だ。彼に出会ってだいぶ丸くなったと思っていたのに……」 凛の言葉に蓮は苦笑すると、「それ、褒めてないよね。絶対」と軽口を叩いた。 「仕方がない。今回は折れてやる。ただし、接触する際には俺も連れていけ。一人で会わせるとめちゃくちゃな事をしそうだからな」 「大丈夫だよ。腕の一本や二本折れたって死にはしないだろうし……。ちょっと、奈々さんの行方を聞き出してお灸を据えるだけだから。ちょっと……ね?」 「――それが心配なんだ」 はぁ……っと凛の口から大きな溜息が漏れる。その様子に、蓮はくすりと笑みを浮かべた。 「随分と面白そうな話してるねぇ」 不意に聞こえてきた声にハッとする。恐る恐る振り向けば、そこにはナギが立っていた。そのほんのすぐ後ろには結弦や雪之丞達が居る。 「……盗み聞きとは感心しないな」 「お兄さんこそ。俺達に内緒で危ない事しようとしてるじゃん」 「……」 蓮はバツが悪そうに視線を逸らす。先に戻っておいて欲しいと頼んだはずなのに、と結弦に視線を送れば、申し訳なさそうな顔をして口を開いた。 「すみません。蓮さんの様子がおかしいのが気になってしまって……」 「結弦君は何も悪くないよ。お兄さんの所に連れて行って欲しいってお願いしたのは俺だもん」 ナギはニコリと微笑むと、そのままスタスタと歩みを進めて蓮の隣へと腰を下ろした。そして、ジッと見つめてくる。まるで心の中まで覗き込むかのように。 「ちょっと水臭いんじゃない? 何勝手に危ない事に首突っ込もうとしてるんだよ」 「――別に、僕は……」 「そうですよ。御堂さん。私達はチームでしょう? みんなで乗り越えようって決めたじゃないですか 」 「うっ……」 そんな風に言われると弱い。それに、彼等を巻き込みたくないと言う思いもある。 今、しなくてもいい苦労を強いられているのは、もしかしたら自分のせいかもしれないのだから。

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