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勝負の行方 14

「それで? 蓮君はどうするつもりなの?」 「うん? そうだなぁ、折角名刺を貰ったんだから、呼び出して本人か確かめてから無理やりにでも口を割らせようかと」 雪之丞の質問に手に持ったコーヒーのカップを眺め、ゆっくりと視線を上げた蓮は笑っていた。 どす黒い何かが溢れだしそうな笑みをうかべ、口元は弧を描いているものの、目元は一切笑っていない。 「お、お兄さん……。お願いだから殺さないでよ?」 「やだなぁ、そんな物騒な事はしないよ。返答次第じゃ、腕の一本や二本ダメにするかも知れないけどさ?」 蓮の笑顔を見た三人は顔を青ざめさせ、彼の言葉を聞きブルリと身体を震わせた。 「マジで力づくで捻じ伏せそうだなオッサン」 「え? だってそうするしかないだろう? 他に方法でもある?」 そんな彼等の様子を見て小さく笑いながら、蓮は残りのコーヒーを飲み干した。 「取り敢えず、目的は奈々さんの居場所を聞き出すことと、これから先、僕らに一切関わらないようにしてもらう事。ですよね」 「監督の奥さんの説得も、じゃない?」 「いや、監督はまぁ、自業自得な気がするし……。塩田が関係しているかどうかはわからないから……」 雪之丞がそう言えば、全員揃って『確かに』という表情をする。それにしても―― 「監督に関して言えば、タイミングが被っただけの可能性もありますからね」 「……うーん。でもまぁ、意外と動画配信の反響もいいし、ゆきりんのお陰でCGのクオリティも以前と遜色なく出来てるから、現状のままでもなんとか行けそうなんだけどね」 美月がぼそりと呟けば、凛が思い出したようにおもむろに口を開いた。 「あぁ、それに関してだが……。君たちには申し訳ないが、来年一月から番組終了まで、各地の動物園や遊園地を回ってヒーローショーの生出演をして貰おうと思っている」 凛が唐突に切り出した話に、メンバー全員が顔を見合わせ、驚いたような表情になる。 まさか、こんなところで地方営業の話が出てくるなんて想像もしてなかった。

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