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因縁の相手 6
実際、目の前の彼は蛇に睨まれた蛙のようにガチガチに固まっていて、一緒に居る蓮でさえも息苦しさを感じるほど重い空気が漂っている。
「一つ一つ聞いていく。そこに嘘や偽りを感じたらどうなるか……わかるよな?」
凛はテーブルに備え付けてあったフォークを手に取るとそれを塩田の喉元に突き立てた。
先程までとは違う、冷たい口調で淡々と話す兄に蓮は戦慄を覚える。
――こ、怖い。
自分はどちらかと言えば精神的にジワジワ真綿で首を絞めるように追い詰める方が好きなのだが、兄はどうやら違ったらしい。
有無を言わさぬ迫力で一瞬にして空気を変えてしまった。
凛の事をスタッフ皆が怖いと言っていた気持ちが、何となくわかったような気がする。
もしかすると、これが本来の彼の姿なのかもしれない。普段自分の前では猫を被っているだけで……。
そんなことをぼんやりと思いながら二人のやり取りを見ていると、青い顔をした塩田が観念したかのように口を開いた。
「目的も何も、アンタたちがここに居るなんて知らなかった! 本当だっ!!
偶然同じ場所に居合わせただけだ!」
ガタガタと震える塩田は怯えた様子で、目に涙を浮かべて必死に訴えかけてくる。凛はじっとその目を見つめ、真偽を確かめるかのように表情を観察をしているようにもみえる。
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