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因縁の相手 7

「偶然、か……。随分都合のいい言葉だな。まぁいい。では、此処に来た目的は?」 「それは……」 凛の問いに塩田は言葉をつまらせた。その間にイライラさせられたものの、ここで爆発してはいけないと思い、ぐっと堪える。 「こ、答えたく、ない」 「……」 その言葉に、凛の瞳の鋭さが増した。塩田は自分の置かれている状況がわかっていないのだろうか? 怯えているくせに、答えたくないとはどういうことだ? 「まぁいい。では質問を変える。高瀬奈々はどこにいる? お前が唆した女だ」 「唆してない。あいつは、自分の意志で俺についてきたんだ」 ――……は? 何を言いだすのかと思えば……。 こいつは一体何を言っている? その言葉に思わず蓮は兄と顔を見合わせる。 「白々しい……。彼女がいなくなってこっちは大変だったのに」 思わず吐き捨てるように呟いた言葉は思ったよりもずっと大きく賑やかなファミレス内に響く。 その声に数人の一般客がこちらをちらりと見たが、すぐに興味なさげに視線を戻した。 幸い、他の客たちは蓮たちの存在に気づいていないらしい。 其のことにホッとしつつ、凛に視線を移せばフォークを握った手がブルブルと小刻みに震えていた。怒りのせいなのか、それとも別の何かが原因なのか……。 「本当だって! 奈々は、監督からのセクハラとハード過ぎるスケジュールに悩んでた。だいぶ思い詰めてて、SNSで知り合ったばかりの俺に愚痴を零すくらいに参っていたみたいだった」 「……」 「それで、ある日初めて会おうって事になって、それまでも何度か電話やアプリでやり取りはしてたんだけど、実際に会って話をしていたら急に彼女が『もう、あそこには戻りたくない。行けば数日は職場に缶詰め状態だし、監督に会ってふたりきりになるのが怖い。もう逃げたい。お願いだから、誰も知らない世界に連れて行ってくれ』ってせがまれて、それで……」 「それで、彼女を連れて夜逃げしたというわけか」 「……まぁ、そう、っすね」 思った以上にあっさりと塩田は肯定した。

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