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遭遇 2
正直言って、こう言う派手な女性は苦手だった。
それはナギも同じだったようで、蓮の服の裾を握りしめ、困惑した眼差しを向けて来る。
「あー、コイツ俺の知り合い。昔共演した事あるんだよ」
「ふぅん、結構綺麗な顔してるじゃない」
「……」
値踏みするように上から下までたっぷりと眺められるのは、あまり良い気分ではない。
「確か今、特撮に出てたよな? 最近よく話題になってる……」
「特撮? あぁ、あの芋っぽい女が出てるアレね。ふぅん……。あんな芋女がヒロイン役なんて可哀想ね。もっと綺麗どころは沢山居るのに、監督の目は節穴かしら?」
小馬鹿にしたような視線が気に入らない。
自信たっぷりの唇を彩るピンクのグロスも、綺麗にネイルアートが施された指先も、全てが鼻について仕方がない。
「……あの女、ムカつくっ! みっきーがどんな思いで頑張ってるか知らないくせにっ」
「ナギ、よせ。相手にするだけ無駄だよ……」
怒りを滲ませた声に、慌てて制止するが、内心では自分だって腸が煮えるくらいには腹が立っている。
「行こう。これ以上話したって無駄みたいだ」
「なんだよ、蓮。もう行くのか? 折角久々に会えたってのに。つーか、よく見たらソイツ、主人公やってる奴じゃん。……マジでこんな時間に二人でナニしてた?」
卑下た笑いを浮かべるその表情が何とも不快で、反吐が出そうになる。
「別に。お前には関係ない事だろ」
「そうツンツンすんなよ。そういや、お前ゲイだって噂があったよな……。つまり、そう言う事。だろ?」
「……行こう。ナギ」
これ以上話をしても不快になるだけだと察してその場を離れようとすると、「おい!」と莉音が呼び止めようとしてくるのを振り切って足早にその場を立ち去った。
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