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遭遇 4
「ん……ふぁ……」
「しー。運転手さんに聞かれちゃうだろ?」
「だ、だって……いきなり、こんなキス……」
「ふふ、感じちゃった?」
「……っばか」
唇を離して耳元で囁いてやれば、ナギはビクリと身体を震わせ、頬を赤く染めてふいっと視線を逸らす。
その様子が可愛くて愛おしくて堪らない気持ちでいっぱいになりながら、窓の外を眺めれば空がうっすらと白み始めている事に気付く。
「……もうすぐ、夜が明けちゃうね」
「うん……」
名残惜しそうにナギも外を眺めていてコツンと頭をこちらに預けてくる。
「ナギ。そんな可愛い事されちゃうと、我慢できなくなるんだけど……」
「なっ、さ、さっきあんなにシたのに……っ」
「ふふ、冗談だよ」
ギョッとしたような顔をして振り向いたナギの顎を掴んで上向かせゆっくりとその柔らかな唇を塞いだ。
「んぅ、んん……、は……お兄さん、ダメだってば……」
「またお兄さんに戻った。ペナルティ一回目だな」
「そ、それはズルいよ……っ」
抗議の声を無視して何度も角度を変えて啄むような軽い接吻を繰り返す。
離しがたい温もりを惜しむように最後に軽く触れるだけの口づけをして唇を離すと、ナギは困ったように笑ってぎゅっと首筋に抱き着いて来た。
もっと触れ合いたくて細い腰を抱き寄せると、ナギは一瞬身を固くしたが、すぐに力を抜いて身を委ねてくれた。
どれだけ抱いても飽き足らず、求めても全然足りない。もっとずっと、ナギと一緒に居たいと願ってしまう。
「……ホントに、我慢出来なくなりそうだよ」
「へ?」
ぼそりと呟いた言葉を誤魔化すように、蓮はもう一度ナギの唇を優しく奪った。車内には甘い空気が充満していて、暫くの間二人は離れる事が出来なかった―――……。
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