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変化する
翌朝、撮影の準備に取り掛かっていると、美月を発見するなりナギが駆け寄っていくのが見えた。
「みっきー!」
「あ、ナギ君。おはよ……って、ちょっと、なに!?」
いきなりガバッと抱き着かれ、美月は訳が分からずにキョトンと目を丸くしている。
「俺、撮影頑張るから! みっきーの方が絶対、ぜーったい可愛いんだから!」
「????」
一体なにを言っているのだろうと困惑している美月とその周辺のざわめきが聞こえてきて思わず噴き出しそうになる。
「……なんですか、あれ?」
「さぁ? ま、リーダーがやる気出してくれたんだからいいんじゃね?」
事情を知らない結弦と東海が首を傾げる中、雪之丞が少し困ったような顔をして蓮の元へとやって来る。
「おはよう、蓮君。あのさ、昨日、グラフィックで一緒にやってくれてる二階堂さんから連絡が来たんだけど、奈々さんやっぱりもう戻る気はないって」
「……そう。じゃぁやっぱり、今のまま何とか頑張るしかないって事だね」
「うん」
「ごめんな。雪之丞にばかり大変な仕事押し付けて」
蓮が謝ると雪之丞はとんでもないと言う風に手を振った。
「大丈夫だよ。二階堂さんもだいぶ操作を覚えてくれたし、この遠征中も一人で編集頑張ってくれてる。それに、弓弦君が色々と手伝ってくれるから」
「へぇ、そっか」
そう言って何処か嬉しそうにはにかむ雪之丞を見ていると、彼の方も随分と変
わったのだと気付かされる。
好意を伝えられ、それに答えられないと告げた時は、こんな風に話すことなないと思っていた。
だが、今はこうして普通に話が出来ている。それだけでも大きな進歩だと思う。
そこにはきっと、結弦の支えがあってくれたからだろう。
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