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変化する 3

――その日の午前中は、驚くほど順調に撮影が進み、予定していたスケジュールより早く休憩時間が取れることになった。 そして一同はホテルの一角に簡易式のミニキッチンを組み立てて美月とナギの勝負の幕が上がる事となったのだが……。 「なんだか緊張するな」 そう言いながら手際よく調理をしていく雪之丞の横で、美月が持参した料理本片手に奮闘しているのを蓮、結弦、東海の三人は遠巻きに眺めていた。 撮影者は毎回交代でする事になっていて、美月と雪之丞の間をナギがせわしなくカメラ片手に動き回っている。 「ねぇ、君のお姉さんは普段料理とかはしないのかい?」 その様子を見つめながら美月の包丁を持つぎこちない動きが気になって何気なく尋ねてみれば、結弦が静かに首を横に振った。 「姉さんは多分、学校の調理実習位しかしたことないと思いますよ。家で作ったのはインスタントラーメンくらいしか見たことないです」 「……マジかよ」 あぁ、やはりそうか。アイスピックで氷でも砕きそうな持ち方をしているなと気にはなっていたが、まさか本当にやったことがないとは思わなかった。 不安げにその様子を見守っていると、おそらく撮影しているナギも同じ気持ちだったのだろう。時々、「ぁあっ」と小さな声が聞こえてくる。 何だろう。料理本を見ながらやっているのに拭えないこの不安感は。 一体なにを食べさせられるのだろうか。遠巻きに見える材料だけでは判断しづらい。 考えて見れば、美月と結弦は実家暮らしで、美月自身は幼い頃からオーディションに受かるために色々な教室に通い、努力して来たのだと聞いている。 もしかしたら、レッスンに重点を置きすぎてそう言う事に気が回らなかったのかもしれない。 元々の器質的に料理に興味が湧かなかっただけかもしれないが。 右往左往しているナギの様子がシュールで、なんだかこっちまで落ち着かない気分になる。

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