271 / 351

変化する 9

「……なに、やってるんだ?」 不思議に思って声をかければビクッと肩を揺らし、ギクリとした様子で東海と美月が振り返る。 「隠れんぼでもしてるのかい?」 「しーっ! 静かに! 今、いいところなんだからっ!」 「???」 小声でそう言われ、不審に思いながら同じように腰を屈めて植木の陰から覗き込むと、ベンチに座って弓弦と雪之丞が目と鼻の先で仲睦まじく話していた。 その光景を見た瞬間、「あっ……」と声を上げそうになったので咄嵯に手で口を塞いだ。 「いま、何か聞こえませんでしたか?」 「え? さぁ……? 気のせいじゃない?」 振り返り、辺りをきょろきょろと見渡す二人を、身を屈めて何とかやり過ごす。咄嗟にナギまで道ずれにしてしまったが、致し方ない。 幸い2人には気付かれてはいないようでホッと胸を撫でおろし緩く息を吐いた。 「……なんで俺まで……」 「ご、ゴメン」 困惑して不満げな声を上げるナギに謝罪しつつ気になる二人の様子を伺う。 「……今日は、ありがとうございました。ろっぷちゃんのお弁当とても美味しかったです」 「そう? そっか……。良かった。そう言って貰えたら嬉しいよ」 嬉しそうに微笑はにかむ雪之丞の姿を見ていると、なんだかこっちまでほっこりしてくる。 盗み聞きは良くないとはわかっていてるが、つい耳を傾けてしまう。 「そ、それでですね……。あの……」 「えっ、うん? なに?」 「その……実は……っ」 モジモジと言いづらそうに言葉を詰まらせてソワソワ落ち着かない様子の弓弦はとても珍しい。 いつもクールで何でもそつなくこなす彼しか知らないので、こんな姿は新鮮だ。一体何を言おうとしているのだろうか? 続きが気になて仕方がない。 「ねぇこれってもしかして……!」 「キタんじゃない!? ヤダ、なんだかこっちまでドキドキして来たっ」 後ろの方では美月とナギがヒソヒソと興奮気味に囁き合っていてそんなに声を出したらバレるのでは? と思ったが、二人はそれどころでは無いらしくこちらの様子にはまるで気が付いていないようだった。 何だか、こちらまで、弓弦のドキドキが伝わって来そうで思わず固唾を呑んで無意識のうちに拳を握りしめる。

ともだちにシェアしよう!