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変化する 10

暫く沈黙が続き、一同が固唾を呑んで見守る中、ついに意を決したように弓弦が顔を上げて雪之丞の顔を見上げる。 「その……」 「弓弦君……?」 頬を赤らめ、緊張した面持ちで雪之丞をじっと見つめる弓弦の姿が目に映る。 「す、す……」 「酢?」 (あぁ、くそ……もどかしいな! 何やってるんだ) この期に及んで言い淀む弓弦に焦れて思わず歯噛みすれば、隣でナギも苛立たしげに茂みの草を握りしめてギリギリと音を立てている。 「す、寿司が食べたいです。今度、作ってくれませんか?」 思わずひっくり返りそうになった。声を上げなかっただけマシだ。 ここに来てそれかー!! と、心の中で盛大にツッコミを入れる。 東海と美月は顔に手を充てて、盛大な溜息を吐いている。 ナギに至っては、がっくりと項垂れ、なんでそうなんだ!と言わんばかりに地面に拳を叩きつけている。 「あぁ、もう……なにやってんのよ」 「寿司って……マジかよアイツ……ダッサ」 まさかのココで? 今絶対そうじゃ無かっただろ! 予想外過ぎる展開に肩透かしを食らった気分だ。 当の本人である雪之丞はと言えば、キョトンとした表情を浮かべていたが、すぐにプハッと吹き出すと口元に手を当ててクスクスと笑い出した。 「ははっ、寿司……。そっかお寿司が好きだったんだ……。いいよ。なんだ、びっくりした。そんな事改まって言わなくてもいいのに」 (そんなわけ無いだろ!) 数多くの女性を魅了して止まない人気俳優が何をやってるんだと、蓮は頭を抱えたくなる。雪之丞も雪之丞だ。今の流れはどう考えてもそうじゃない。 察してやれよ! と言いたいのはやまやまだが、雪之丞の鈍感さを責めるのは酷だろうか。 それに、今はどうかわからないが、雪之丞は自分の事が好きだったのだ。年齢差もあるし、まさか自分が告白される立場になるなんて微塵も思っていないのかもしれない。

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