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変化する 12

「ねぇ。さっきのどう思った?」 夕食を食べ、部屋へ戻る途中廊下を歩きながら不意にナギからそんな事を言われて、蓮はコテンと首を傾げた。 「さっきのって?」 「だからさ。ゆきりんと弓弦君のこと」 「あぁ。……うーん、僕はお似合いだと思うんだけど」 そう言うと、ナギは「だよねぇ」と相槌を打ってから困ったように眉根を寄せた。 あの後、弓弦はよほど気まずかったのか、逃げるように部屋へと籠ってしまったし、雪之丞はそんな弓弦を心配するばかりで全く進展しそうになかった。 「雪之丞は、多分……怖いんじゃないかな」 「怖い? 何が?」 ナギが不思議そうに聞き返すので、苦笑いして言葉を紡ぐ。 「自分で言うのもなんだけど、アイツ、僕の事をずっと好きだったって言ってたから……。いいなと思っていても、もしかしたらまたフラれるんじゃないかって思うと、なかなか一歩踏み出せないんだよ。きっと」 きっと、そうなのだ。きっと雪之丞は弓弦の気持ちに応えたくても応えられないのではないだろうか。 それは、過去の恋愛が原因なのか、それとも他に理由があるのかは蓮には分からないけれど。 なんとなく、そんな気がする。 「そっか。そう、だよね……」 「それに、年齢差もあるだろ? そう簡単にはいかないんじゃないかな」 弓弦はああ見えてもまだまだ高校生で、しかも人気俳優だ。引っ込み思案で何時も気弱な雪之丞が自分から積極的に行くとは考えづらい。 「それにしても……。随分と雪之丞たちの事を気にしてるじゃないか」 揶揄い交じりに訊ねると、ナギは口を尖らせて俯いた。 「そりゃそうだよ。結果的にゆきりんがフラれたのって俺のせいみたいなもんだし……」 「……」 「だからさ、ゆきりんには幸せになって欲しいんだ」 「……優しいんだね。ナギは」 珍しくしおらしいナギを見て、蓮は思わず足を止める。 「優しくなんて無いよ」 少し寂し気に微笑んで、ナギが自嘲するように呟く。 その横顔がどこか切なげで胸が締め付けられるように痛んだ。いつも明るく振舞っているけど、本当は色々と考えて悩んでいるのだろう。 もしかしたら、自分と付き合ったことを後悔していたりするのだろうか? ふと、そんな不安が頭を過る。

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