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変化する 13
ナギが今何を考えているかなんて、わからない。
「ゆきりんが弓弦君とくっついたら、お兄さんは俺だけのものじゃん。だから、そうなったらいいなぁって……、都合のいい事ばっか考えちゃってさ、自分の事しか考えられない酷い男なんだ」
「ナギ……」
その言葉を聞いて、蓮は咄嵯に腕を伸ばしてナギを抱き寄せた。
一瞬、驚いた様子を見せたナギだったが、直ぐに身体の力を抜いてそっと身を預けてくる。
ナギの体温が心地よくて温かい。
「馬鹿だな。僕はもうとっくに君しか見てないのに……」
ナギの髪を撫でて、耳元で囁けば、ピクリと肩を揺らして顔を上げた。
その瞳は潤み、頬は朱に染まっていて、恥ずかしいくらいに真っ赤になっている。
まるで、ゆでだこみたいで可愛いなと思う。
「……わかってる。最近のお兄さんは、変わったなってひしひしと感じるし。……でも、それでも時々不安になるんだ。信じて無いとかそう言うわけじゃないけど」
そう言って、ナギは蓮の顔を覗き込むようにして見上げてきた。不安げに揺れる琥珀色の瞳が愛おしくて堪らない。
好きだと思った。
この子が、他の誰でもないナギが好きなのだと、改めて実感した。
「バカだなぁ……。僕がどれだけナギの事が好きで仕方がないと思っているんだ」
照れ隠しに、悪戯っぽく笑って見せると、ナギは嬉しそうに破顔した。
「うん。知ってる。俺もお兄さんの事好きだよ」
ぎゅぅっと抱き着いて、甘えるように胸に顔を擦り付けてくる。
「……なんだか、猫みたいだな」
「えぇー、何それ」
クスクスと笑い合って、そのままゆっくりと距離を詰めて唇を重ねようとしたその時――。
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