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変化する 14
「あー……ゴホン」
「っ!?」
突如聞こえて来た咳払いに二人はビクッと肩を震わせると、慌てて距離を取る。
ギギギっと油の切れたロボットのような動きで振り向くと、呆れたような目をした凛が盛大に溜息を吐きながらこちらを見ていた。
「……全く。年甲斐もなくなにをやってるんだ……お前らは」
フーっと息を吐き、眉間に深い皺を寄せながら凛が近づいてくる。
「いちゃ付くのは構わんが、場所を考えろ。バカップルども」
「ぅ……っ返す言葉もないよ」
「ごめんなさい……」
「まぁ、仲が良いのは良いことだが。あまり人の目に触れるところではするな。全員が全員そう言う事に好意的だとは限らないんだからな」
呆れ果てた凛の言葉に、二人揃って項垂れると、彼はもう一度溜息を吐いた。
「全く……人の気も知らないで……」
「ん? 何か言った? 兄さん」
「……いや。何でもない」
ボソボソと何事か呟いた兄の言葉は、蓮の耳には届かなかったが、凛はフイッと視線を逸らすと一度目を伏せ、その後蓮と向き合って静かに口を開いた。
「あぁ、そうだ。蓮。俺は少し早いが戻らないといけない急ぎの用が出来たんだ。支度したらすぐに出るから、部屋は好きに使え」
「え? あぁ、うん」
「……あまり盛り上がり過ぎるなよ? 隣に仲間が居るんだから」
「なっ!?」
肩に手を置いてそっと蓮の耳元で囁くと、凛はフッと自嘲気味に笑ってから蓮と目を合わせることなく、荷物を取りに一旦自分の部屋へと戻って行った。
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