277 / 351
変化する 15
「……すみません。調子に乗りました」
「もぉ~。ほんとお兄さんって変態だよねぇ。……でもまぁ、そういうところも嫌いじゃないけど」
「えっ?」
ボソリと呟かれた言葉に顔を上げると、ほんのりと頬を染めたナギの顔が視界に映った。
その表情にドキリとする。
「……後で、部屋に行くから……」
それだけ言うと、ナギは逃げる様にその場を去って行ってしまった。
蓮はその後ろ姿を惚けたように眺めていたが、やがて我に返ると緩む頬を抑えられず、その場にしゃがみ込んで悶絶した。
なんだあれ、可愛すぎないか?
なんであいつはこんなにも可愛いのだろうか。本当にずるい奴だと思う。
「うわっ、びっくりした! オッサンこんなとこにしゃがみこんで何やってんだよ」
突然、背後から掛けられた声に驚いて振り返れば、呆れたような顔をした東海の姿。
「いや……。うちの相棒が可愛すぎて色々と辛くて」
「あー、そういう……」
蓮の言いたい事を察して、東海ははぁと盛大なため息を吐いた。
「たく、紛らわしいんだよ! オレはてっきり具合でも悪いのかと……」
「なに? 心配してくれたのか?」
「はっ? ち、違うし! 別に心配なんてしてないっての! 誰がアンタなんか……っ!廊下の真ん中でしゃがみこんでんの邪魔だっただけだし!」
途端に慌てふためく東海の様子を見て、ニヤリと笑う。相変わらず素直ではない子だ。
「ふは、ごめんごめん。もう戻るから。心配してくれてありがと。案外優しい所があるんだな。はるみん」
「っ! はるみんって呼ぶなって言ってんじゃん!!」
「はるみーん。何してんの? 遅いわよ」
「うげ……」
蓮が揶揄い交じりにからかえば、遠くから美月の声が飛んできて、東海は小さく息を吐くと頭をかいた。
ともだちにシェアしよう!