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すれ違う 3
「……この人はねぇ、んー、俺の大事な仕事仲間だよ」
「仲間? 獅子レンジャー? 違うよ。こんなオジサン居なかったもん」
「うーん……」
純粋な瞳がナギと蓮を交互に見比べる。確かに、この位の年齢の子供にアクターと言う仕事を理解させるのは無理と言うものだろう。
困ったように眉を寄せ、どう説明していいものかと悩むナギを見て、蓮は苦笑した。
「ナギの弟君。《《お兄さん》》はねぇテレビには映らない秘密の仕事をしているんだ」
「ふぅん」
お兄さん。と、少し強調して言えば、弟は興味を失ったのか直ぐにナギの方へと身体ごと向き直った。
「兄ちゃん。公園行こ」
「えーっ、公園かぁ……」
何とまぁ、切り替えの早い事。少し寂しくはあったが、全国の同年代の子供たちにとって、獅子レンジャー=ナギと言う図式が成り立っているのだから仕方がない。
「ねぇ、公園~っ!」
「うーん……」
無邪気な弟に手を引かれ、ナギは困ったように蓮を見る。 その表情からは、折角会えたのにと言った雰囲気を感じ取り、思わず失笑が洩れる。
「おじちゃん、バイバイ」
「お兄さん、な?」
一応、訂正はいれてみたが、聞く気が無いのかナギの手を引いて、早く行きたいとせがむ。
「……ごめんね、お兄さん。また今度埋め合わせするから」
「そうだね、また今度」
後ろ髪を引かれる思いで渋々蓮の元を離れていくナギの後ろ姿を見送っていると、公園の入り口付近に差し掛かった時にチラリと此方を振り返ったナギと目が合って、蓮は堪らず声を掛けた。
「やっぱり僕も一緒に行ってもいいかな?」
そんな捨て犬のような目で見られたらほおってはおけない。
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